お茶の水ホテル昇龍館
東京の中心で眠っている龍

Words :
Zoria Petkoska
Tokyo island “Hachijojima” Great nature’s comfort on tropical island in TokyoTokyo island “Hachijojima” Great nature’s comfort on tropical island in Tokyo

大都会の真ん中にあるチャーミングな旅館

大都会の真ん中に、素敵な「旅館」はそう滅多にみつかりません。昔ながらの旅館は、普通静かな温泉街にあるからです。しかし昇龍館は、御茶ノ水駅から徒歩数分の東京のど真ん中にあります。往来の雑踏から一歩館内に足を踏み入れれば、街の喧騒は消え、静寂に包まれます。出迎えるスタッフの奥に広がる景色は、細部まで細やかな視線が行き届いた和の空間です――和紙でできた案内標識から、神田祭の神輿の展示、随所にあしらわれた優雅な龍のモチーフ、さらには、宿の名「昇龍館」にいたるまで――「リュウ」は龍(ドラゴン)を意味しますが、これは「旅館」の響きとも掛け合わされた言葉です。このウィットさにグッときたなら、宿とあなたはもう気心の知れた仲といえるでしょう。

客室は「和モダン」のデザイン
客室は「和モダン」のデザイン
館主の小林さん
館主の小林さん
地下一階の休憩室にあるたくさんのマンガ本やボードゲーム
地下一階の休憩室にあるたくさんのマンガ本やボードゲーム
浴衣姿でリラックス
浴衣姿でリラックス
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ホテルと施設

昭和に建てられた佇まいや日本の旅館らしい装飾から、圧倒的な歴史の深さを感じられます。そこに、和モダンのテイストとして新たに加わった、自然な色使いや、木のぬくもりを基調とした落ち着き、洗練された空間の全てが、宿に新鮮な息吹を吹き込んでいます。これは2009年の全面改装によるもので、昇龍館はこれを機に多くのゲストを迎えています。

お茶の水ホテル昇龍館には、多様なサイズやスタイルの客室が用意されているため、予算に合わせて好みの部屋を選ぶことができます。私たちは、昼間はやわらかい自然光がふりそそぐ5階の広々とした和室に宿泊しました。心地よい宿の浴衣に着替え、座卓に用意された煎茶と羊羹で一息つきます。客室にはこのほかにも、障子を貼った襖にふかふかの布団など、本物の旅館体験に欠かせないすべての要素がそろっています。

客室のデザイン性の高い照明
客室のデザイン性の高い照明
Powerful traditional Gravity

浴場

ホテルの大浴場(男女別)は地下にあります。大浴場の脇の湯上り処には、マンガ本や美術コレクションの小さなライブラリー、将棋などのゲーム、無料のマッサージチェア、ドリンクの自動販売機もあります。他の多くの旅館とは異なり、昇龍館の浴場は一晩中営業しています――営業時間ぎりぎりに駆け込む必要のない温泉は、多忙な東京の人々や観光客にとってありがたい特典です。

いくつかの客室はベランダに露天風呂も備えています。私たちの客室は江戸情緒たっぷりの檜づくりの露天風呂で、星空を見上げながらお湯につかれます。

露天風呂
露天風呂
Jazz it up! Jazz it up!

Jazz it up!

ジャズ喫茶・バー「Olympus!」--その心安らぐレトロモダンな味わいが、この宿の雰囲気にぴったりです。バーは宿泊客以外の人も利用できます。このスペースは朝になると朝食ルームに変わります。そしてランチタイムが終わると、お待ちかねのバータイムがはじまり、ラウンジはとろけるようなオールディーズ・ジャズで充たされます。「ジャズバー」は日本独自のジャズ文化で、ジャズのレコードを聴かせるバーのこと。Olympus!は、マスター自慢の3,000枚のレコード盤のコレクションを、ヴィンテージ・プレーヤーと60年代のグルーヴィーなOLYMPUSスピーカー(店名の由来)で聴かせてくれます。

ジャズを愉しむ著者
ジャズを愉しむ著者
Olympus!が誇るおよそ3,000枚のアナログレコード盤のコレクション
Olympus!が誇るおよそ3,000枚のアナログレコード盤のコレクション
CグルーヴィーなJBLスピーカー'OLYMPUS'
グルーヴィーなJBLスピーカー"OLYMPUS"
大浴場
大浴場
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結び

大浴場の横のライブラリーでアートブックを読んでいた時、宿のゲストブックに目がとまり、ページいっぱいの宿泊客からの感動や感謝のメッセージを読みながら、ついうなずいている自分に気がつきました。昇龍館は、本物の日本の宿を体験するにはもってこいの場所です。温泉と東京の両方を思うままに愉しむことができ、東京に暮らす人にも休息と楽しみを与えてくれます。何より、煩瑣な日常から抜け出せる素晴らしい場所――そういう意味で、昇龍館はまるで魔法のような異空間なのです。

Zoria Petkoska

WRITER

Zoria Petkoska

ライター、詩人。現在、東京で旅行・カルチャー関連のジャーナリストとして活動。写真愛好家でもあり、その時その場にあるカメラ、スマートフォン、35ミリフィルムで、日常のワンシーンを切り取るのが得意。数カ国語を話すことができ、好奇心旺盛な博識家で、ほとんどの時間を旅行や、東京を舞台にした半架空の物語を書いて過ごしている。

Instagram: zoria_in_tokyo